第43章 優先順位
「…生理」
「へ?」
「生理を、止めるの」
千夏は掠れた声でそれだけ言うと、足を抱えて丸まってしまった。
なるほど。
千夏は本当に知らないんだ。
妊娠したから生理が止まるのではなく、生理が止まるから妊娠するという理解をしている。
じゃあ、どうやったら生理が止まるのか、と聞きたいところだけれど、なんかもう、疲れてしまった。
「ねぇ、千夏。もっとちゃんと授業受けなよ」
「う、受けてるよ!」
学校には行ってるみたいだけど、どーせ授業をサボったり寝たりしてるんだろう。
「あー…心配だわー…」
思わず本音が漏れる。
千夏には千春がついているから大丈夫だと思うし、中学2年生で性知識がない人もちらほらいるのだろうけど。
千夏は馬鹿だしお人好しだ。
騙される可能性はゼロではない。
千夏の横の空いたスペースに横になり、大きく息を吐いた。
そして、すぐにベットから降りて、気持ちを落ち着かせた。
「どこ行くの?」
千夏が聞いてくる。
「千夏、約束しよう」
「はい」
「絶対に男と同じベットで寝ないこと。同じ部屋で泊まるのもなし。体も触らせたらダメ。心臓の音を聞かせるのも無し」
俺が千夏に性について教えることもできるけれど、絶対千夏は可愛い反応をするだろうから我慢できるか分からない。
途中でふざける自信だけはある。
でも、誰かに教えさせるのもなんか嫌。
どこかのタイミングで千春にお願いしてみるか。
「じゃ、俺はあっちの椅子で寝るから」
「な、何でよ。行かないで」
「さっき約束したでしょ。男と一緒に寝たらいけないって」
「やだ!」
千夏は間一髪で俺の服を掴んで。
千夏の握力と服の耐久性の勝負となった。