第43章 優先順位
冷静さを取り戻した歌姫は、自らの呼吸を落ち着かせて、ゆっくりと着席した。
「…もしかして、千夏と別れたのもコレのため?」
「どー思う?」
「…相変わらず、見栄っ張りね」
見栄っ張り。
その評価は如何なものか。
「ま。今回は流石に悩んだよ」
「…付き合う時と、どっちの方が悩んだ?」
「うーん…」
思い返せば、付き合う時も凄く大変だった。
次会ったら告白する、と覚悟を決めて例の10年間を過ごし。
再開したらしたで、色々な面倒事が絡み合ってしまい、中々気持ちを伝えるまでに時間がかかった。
今思えば、顔を合わせたあの時から、お互い告白するタイミングを探していたのだと思う。
会話の全てを覚えている訳では無いけれど、自分達の関係についての話に入るときは本当に突然だった。
覚悟が決まるのはいつでも突然の事で、後は流れに身を任せて…。
「別れる時、かな」
僕達の関係をリスタートさせるまでには、10年の猶予があった。
しかし、別れる時は本当に一瞬で、僕が悩める時間は1週間もなかった。
「…付き合う前の相談は色々茶化しがいがあったけど…。ここまで不自由だと…なんか…同情するわ」
「情緒不安定?」
「慮ってるの!!」
シェイクスピアの著書、ロミオとジュリエットの中に「ああ、どうしてロミオはロミオなの」なんていう言葉があったような気がするけれど。
この言葉を実際に感じる人間は、僕達なのかなと、たまに思う。
『あのね、あのね!この前ね!』
『…少しは落ち着けよ』
『だって、五条君と遊べる時間、少ないからさ!』
遊べる時間が少ないのは、子供の頃の話だけはなくて。
今になってもそれは変わらない。
そんな中で、別れを選んだ僕は馬鹿なのかもしれない。
「…千夏のこと思ったら、今回ばかりは仕方ないのかもしれないね」
「もしかして僕、慰められてる?」
「あー、そうそう、慰めてるよ(棒)」
「えー…」
「は?なんでそんな感じなわけ?」