第43章 優先順位
…ふむ。
あの子達を信頼していないわけではないが、やはり心配だ。
野薔薇に応援がてら、匂わせておくか。
『何?忙しいんだけど』
「あー。頑張ってねって言おうと思って」
『切るよ』
「ちょ、ちょっと待って」
電話の向こうから、微かに悠仁の声がする。
胸がキュッとなって、鼻の奥がツンとした。
「…ねぇ、野薔薇」
『…何』
「辛くない?」
『はぁ?…あぁ、虎杖のことね。別に普通よ、普通』
普通、か。
私の方がおかしいのだろうか。
術師として生きていても、人が生き返るなんてそうそうないのに。
というか、普通に考えてありえないのに。
『ていうか、あんたの方がやばいんじゃないの?』
「…それはまた今度話そう」
『それもそうね』
長話で野薔薇達の時間を貰うのも申し訳ない。
「あのさ。もしかしたら、なにか起きるかもしれないから」
『何かって?』
「何かは何か。ただの勘」
『あんたの勘って役に立たないよ。そろそろ自覚しなよ』
「そうかも」
そうならいいのだけれど。
『じゃあ、切るよ』
「うん。殺す気でやれよ」
『はっ。あんたがそんなこと言っていいの?』
「いーの。私、高専の職員じゃないし」
『あっそ』
面白いくらいに、一瞬で切られた通話。
呆れて思わず笑ってしまった。
すると、再び携帯が鳴って。
何か言い忘れたのかな、なんて思って出てみると。
『忙しいところすみません』
「あ、真希かぁ。野薔薇がかけ直してきたのかと思ったよ」
真希からの電話なんていつぶりだろうか。
もうずっと一緒に稽古していないから、当たり前といえば当たり前か。
『あの……』
「…頑張れ。私も暴れちゃおうかな♪」
『それは、ちょっと』
「ふはっ。冗談だって。見てるからね」
『…すみません、落ち着きました』
「行ってこい!」
『はい』
皆、色々背負いすぎだと思う。
もっと気楽に生きられればいいのに。
そうもいかない世の中が少しだけ恨めしいけれど、そんな世の中だからこそ得られるものもあると、最近は思うようになった。