第43章 優先順位
正直、気が進まないけれど。
言う通り、A地点へ向かった。
そこには本当にあの学長がいて。
驚き半分、憎しみ半分。
「はい、これ」
「…確かに受けとった」
嫌い。
この頑固の権化のような姿が嫌い。
とにかく嫌い。
「…まだ何か用か」
「いや。やっぱり、あんたのこと嫌い」
「そうか」
この顔を見ていたくないので、すぐに湿林の中に避難。
残暑の日差しを避けられるだけで涼しさを感じることができる。
(…。仕事か…)
体の鈍りを無視できはしないが、どうにも乗り気ではない。
明らかな嫌な予感。
冥冥さん達の契約が何なのかは知らないけれど、あの小瓶を渡した時点で、この交流会において”事件”が起きることは確定だ。
『”保管庫”から準1級から1級程度…のものを準備しなさい』
「え…。な、何に使うの?』
事前確認の集まりの後。
冥冥さんはこのように指示を出した。
あの10年間の始まり。
それこそが”保管庫”の存在を示す。
11年前。
私は命を狙われていた。
当時は傑関連のものだと思っていたけれど、悟曰く、私個人に追われる理由があるらしい。
その結果、山奥に身をひそめることを決め、その中で自分自身の力を知り、高める努力をした。
それと同時に、何物も殺さない努力もしていた。
どうにかして呪霊を殺さずに、人に害を与えないように…。
その結果たどり着いたのは、呪霊の保管だ。
端的に言うと、呪霊を殺さずに、無害なものにするというのは不可能で。
だから、私は札を用いて呪霊を保管することにした。
いつかそういう未来が来た時のために…。
そして、12月15日。
私が野宿の拠点としていた所に、一通の手紙が届いた。
いや、1羽の黒い鳥、と言うべきか。
その鳥の足に結び付けられていたのは、ほんの一言が書いてあるメモ用紙で。
差出人は不明。
でも、推測するのは簡単だった。
その内容を無視しようと、従おうと、私の居場所がバレていて、今もどこかで監視されているのだろうと思い、折角なら無視してやろうとメモ用紙をちぎってゴミ袋に入れた。
大事なのはそこではなくて、冥冥さんはどちらの味方か、という点。