第43章 優先順位
「そして東京都の皆にはコチラ!!」
バゴッと大きな音を立てて。
台車の蓋が真ん中で割れた。
その瞬間。
私と歌姫はその中身に釘付けとなった。
「故人の虎杖悠仁君でぇーっす!!」
「はい!!おっぱっぴー!!」
生命活動の基本である呼吸を忘れ。
震える手で開け放たれた口内を隠した。
そよ風が私の前髪を揺らし、私の焦点は泳ぎ…。
気づけば、2歩後ろに下がっていた。
「ハァッ…ハァッ…」
息を吐き出せない。
変な音を立てながら、肺が空気を欲しがるばかり。
「千夏…?ちょ、どこに…!!」
ピンクの髪の毛。
高専の制服にバッチ。
あれは…幻?
いや、声が彼のものだった。
それに、悟が死者をあんな風に扱うはずがない。
つまり。
これらが示すことは…。
「ゴホッ…ガッ…」
先程胃に放り込んだ食べ物が逆流。
落葉広葉樹林の下に生える特有の植物にぶちまけてしまった。
ほんと?
夢じゃない?
蘇る虎杖悠仁との思い出。
短い間だったけれど、何度も一緒にご飯を食べ、冗談を言い合い、笑いあった。
それと同時に、傑との思い出も思い起こされた。
全て私の輝かしい思い出で。
震えと共に涙が溢れ出た。
傑も。
悠仁も。
2人も生き返った。
元から死んでなかったのかもしれないけれど、とにかく生き返った。
もう一度、2人の笑顔を見れた。
人は生き返らない。
私が何度もぶち当たった壁で、今まで何度も涙を流してきた当たり前の事実。
これを、もう。
当たり前として捕えなくてもいいのではないか。
だって。
もう、
2人も…