第42章 ばいばい
20年来の本音を。
「守ってくれなくていい」
ずっと言いたかったけど、我慢してきた。
「守ってくれなくて、いいんだよ」
頑張る悟を邪魔したくなかったから。
「悟は私のために最強を目指してくれてた…。でも、私はその横で悟が最強でいなくていいように努力してきた」
悟の強さが群を抜いているから、周りから最強と言われ、自分でもそれを誇示しなくてはならなかった。
全ては呪術界の均衡と、私の平和のために。
そんな孤独な戦いをして、辛い思いや悲しい顔を欲しくなかった。
だから、私は悟を普通の人間にしてあげられるように、私も悟と同じ位置に立とうとした。
”私は特別なの”
常に広がり続ける差に絶望しながらも、私はその為だけに努力してきた。
「私はただ悟と一緒にいたいだけなの。対等に、向かい合って…」
「僕だって…。でも、千夏がいなくなったら意味が無い。僕だけのものでいてほしい」
秘密は誰かを守るためにあるけれど、同時に誤解を沢山生む。
「…あのね、実は」
私はもう、その誤解に耐えられそうにない。
「…なんて言ったらいいか分からないんだけど」
「…」
「し…」
「…し?」
「し…んだと思ってた、知り合いを、見かけて…ね」
ゆっくり顔を上げると、悟は息をしていないように動かず、ただ私をその目で見ていた。
「あ、頭おかしいよね。そんなはずないって…分かって、るけど…」
会話もしたし、体にも触れて温もりを感じた。
「それ、で…この間、皆に嘘ついて出かけたのは…その人に会いに行ってて…。会うって言っても30分くらいだったけど…」
30分くらいしか記憶が無いと言った方が正しいけれど。
「隠してたのは、その人に秘密にしてって言われたのが1番で…。悟、とか、皆に伝える…と、無理に慣れた心が、苦しんじゃうと、思って…」
上手く言えなくて…、今まで隠してて…ごめん、と最後に付け足した。