第5章 空蝉
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コンビニ行かない?────
私を動かしたのは、この一言だった。
この一言が、就寝前の私を外に連れ出した。
「何買うの?」
「決めてなーい。なんか腹減っただけ」
私と出かける口実?
そんな風に一方的に感じて、五条に1歩近づく。
「アイス、奢ってよね」
「何で」
「よしっ、寝ようって決めた人を連れ出しただから、それくらい言われなくても奢れよな」
こんな時間にアイスを食べたら、体に良くなさそうだけれど。
今はそんなことどうでもよかった。
「最近さー、マジで先生に好かれてんだけど。呼び出し回数多すぎ」
「『千夏、ちょっと来い』」
「あはは!似てる似てる!もっかいやって」
時折すれ違う人に聞いてみたい。
私達、どういう関係だと思う?って。
恋人って言われたら、どうしようか。
そんなことを妄想するのはとても楽しい。
「涼しひぃぃ…!」
「天国っ…!」
2人してコンビニのドア前で天を仰ぐ。
店員さんに変な目で見られたけれど、しばらく何も気にせず2人で文明の力を感じていた。
「硝子達にも何か買っていこーっと」
「これは?」
「ブッ…!その、その、顔で、いちごタルト持ってるの、ヤバっ…!あはは!」
モノマネだけれど、夜蛾先生といちごタルトが似合わないことはよくわかった。
全く似ていないけれど、特徴を掴んでいる五条のモノマネがツボに入り、しばらく笑っていた。
「コンビニって便利だけど、まぁまぁ高いよな」
「それ」
私はりんご味。
五条はオレンジ味。
棒付きアイスを咥えて歩く。