第41章 蝶蝶喃喃
「…つ。千夏、聞いてるか?」
低い声。
寝ぼけた頭で学長の声だと判断した。
「もちろん、それでいいよぉ…」
右耳を引っ張られた。
その痛みに、慌てて鈍った感覚を払いのけて目を開けた。
「痛い……!」
「起きなさい」
冥々さんが珍しくお怒りで。
私は瞬時に姿勢を正した。
けれど、私の体は学長の声で眠ってしまう体質らしくて。
このような一連の流れをもう一度繰り返した。
本当はもっと眠っていたかったかれど、冥々さんのお怒りよりも深刻な問題が生じ…。
(足がしびれた…!!)
痛くて、痛くて。
このことが冥々さんに知られたらいじめられることは目に見えている。
何とか姿勢を正そうとするけれど、足のしびれによって動けない。
「最後に。何か言うことはあるか?」
「ま、適当に頑張ってね~」
痛い、痛い。
「千夏はなんかあるか?」
「え?ああ、えーっと」
ここにいる人すべてを見まわして、視線が目の前の野薔薇で止まる。
「むかつく奴は蹴散らしちゃいな」
「なんで私の顔見るんだよ」
「それは…うわっ」
少し前に身を乗り出しただけなのに、凄い痺れが蓄積されていて。
そのまま前に倒れてしまった。
「痛い、痛…!!!!」
「何やってんだお前は」
「あ、足が…!!!」
呆れる学長と真反対のリアクションを取った人。
それは紛れもなく野薔薇だった。
「あーはっはは!!あんた…!」
「なにさ!野薔薇だって痺れてるでしょ!!」
私の言葉が合図だったように、真希が野薔薇の足を触った。
「ぎゃ…!!!!」
「野薔薇もじゃねーか」
「真希、先輩!?ああ!痛っ!!!!」
同じくして悶える野薔薇。
それを笑うと、後ろから冥々さんの声がする。
「千夏」
「ひっ!!」
足のしびれよりも怖い冥々さん。
痛みを我慢して、なんとか席に戻って、おとなしく再び正座した。
「…じゃあ、これで打ち合わせは終わりにする。企画側は解散。お前らは作戦会議でもして随時解散しろ」
「「「「「はい」」」」」