第41章 蝶蝶喃喃
私個人としては今回の喧嘩に関して、手を出したこと以外に反省点はなかった。
いくら血が上っていたとしても、お互いの口から出た言葉は本心を表していたはずだ。
加えていえば、悟が本心を吐露してくれて嬉しかったくらい。
喧嘩の内容はおいておいて、このような結果になったことに関しては笑い飛ばせるだろうと、私は楽観的に捉えていた。
しかし、彼はその逆で。
いくら反射的だとしても、私に対してあの出力の呪力を放ったことが許せない。
今回は怪我で済んだけれど、今度は私を殺してしまうかもしれない。
だから…。
というのが、2日前に行われた、私と彼の最後の会話だった。
「めっちゃ面白かったよ!最後のとことか特に!」
「でしょ!?野薔薇が気に入りそうだなって思って。ああいう飾らない現実味のあるnotハッピーエンドみたいなの、いいよねぇ〜」
「伏黒は!?」
「…まぁまぁ?少しグロかったなって感じ」
「「そこがいいんだよ!」」
ハイテンションな女達に引いているのか、恵はいつもより目付きが鋭かった。
「ちょっとお花摘みに行ってきまーす」
「じゃあ私達はグッズ見てるー」
「私は買わないからね」
「うん、お金出してくれればいいよー」
だから、金を出さないと言ったんだけど!
映画館のグッズは高いことを知っているだろうか。
残高はまだまだあるけれど、少しばかり遠慮というものを覚えて欲しい。
用を済まして、軽くメイクを治す。
腫れていた頬も既に治りかけていて、マスクをしていればあまり目立たない。
『外のカフェにいる』
たった今送られてきたメッセージにため息をついて。
小さなバックを肩にかけて、ヒールを鳴らした。