第40章 宵闇
薄暗い場所。
右に行くにつれて、紫色の空が広がっている。
下には何も無い。
1寸先も濁って見えず、地面の質は水に近かったけれど、手で触れても何も感じない。
自分が何に支えられて立っているのか分からないけれど、とりあえず歩けるようだから歩いてみる。
不思議と心が軽い。
そう思ったら、重力なんて無視するように、少し跳ねると2mほど体が浮いた。
落ちていくのもゆっくり。
早く落ちたいと思えば、すぐに落ちる。
不思議な空間だ。
目を閉じて深呼吸した。
懐かしい芳香剤の匂いがした。
変に甘いグレープフルーツの匂いが。
目を開けた。
驚いた。
見渡す限りシロツメクサが咲いていて。
空は薄暗いままだけれど、ずっと奥の方は明るくなっているように見えて。
そっちに行きたくて走っても、明るい場所は遠くなるばかり。
こんなにたくさんシロツメクサがあるのだから、冠でも作ろう。
まずは2本とって、輪っかの土台となる茎を編む。
それを繰り返すだけ。
「あ、───ちゃん」
やっほー、と言うように──ちゃんは近寄ってきた。
周りにも──ちゃんに似た呪霊が集まってきた。
「はい、冠あげるね」
──ちゃんの頭に冠を乗せた。
速攻で作ったもうひとつを自分の頭に乗せた。
「ありがとう」
「どーいたしまして!」
そこで、ふと疑問に思った。
「なんでここにいるの?千春が──ちゃんのこと殺しちゃって…」
「千夏ちゃんが呼んでくれたからだよ」
「私、今まで何回も呼んだよ?」
「ふふ」
──ちゃんの不気味な笑い声と同時に、後ろから声がした。
「千夏…」
「悟!」
声は耳元で聞こえたのに、見えるのは米粒のような悟。
手を伸ばすと、悟がこっちにやってきた。
「千夏、お前…」
「凄いね!やっぱり私も悟みたいにヒュンって移動したい」
「違う、今のは…」
すると、シロツメクサが四方八方から赤色に染まる。
赤い色の絨毯が引かれていくようだった。
「千夏!今すぐやめろ!」
「え、何を…っきゃ!?」
私達の足元が赤色に染る前に、悟が私を抱き上げて宙に浮いた。