第40章 宵闇
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「す、すみません!八乙女さんの…」
病院入口の自動ドアを開閉したところで、息を荒くした看護師さんに呼び止められた。
「今すぐ来てください!私達じゃどうにもならなくて…」
「な、何があったんですか?」
千夏は数十分前までベットで無気力に座っていたはず。
容態が悪化するなどの病気でお世話になっていたわけではないし…。
「と、とにかく、来てください。中庭です!」
「わ、分かりました」
看護師さんもそういった類の顔はしていない。
どちらかと言えば、頭を抱える学長に似た顔であった。
「八乙女さん、戻りますよ」
「…」
中庭はの中央の花壇横に人集りが。
看護師さん数人に囲まれ、声掛けを無視している千夏は、なんと。
呪霊を腕に巻き付けていた。
僕が近づくと、看護師さん達は揃いも揃って安堵した表情になったが、そんなに期待されても、僕も千夏が何をしているのか分からない。
「えっと…。千夏?」
呪霊といっても、放っておいても被害のないレベル。
確かに、呪霊が見えない人から見たら、千夏が何をしているのか全く分からないだろう。
まぁ、見えても分からないのだけれど。
「看護師さん達を困らせてどーすんの。そんなもん、とっとと祓って病室戻りなよ」
千夏の方を叩いた。
すると、そこはとても熱く腫れていた。
「おまっ…!」
考えられる要因はひとつしかなく、すぐに千夏の腕を持ち上げて呪霊を祓う。
毒だった。
僕も、僕の目もコイツは安全だと判断した。
それは間違いない。
第一、こんなものがウロウロしていたら被害が耐えないはず。
「わざと噛ませただろ」
考えられる可能性はふたつにひとつで、千夏がわざと呪霊を過度に刺激して、体に毒が入り込んだ。
毒の程度は知らないけれど、千夏は少し疲れた様子で、腕を名残惜しそうに見ていた。