第5章 空蝉
****
未だかつて無いほどスッキリとした目覚めだった。
ロボットのように次の行動に移る準備を終えてから目が覚めたような感覚。
ベットの上で寝たからだろうか。
無意識下でも心地よい眠りを追求するのが得意みたい。
「……今、何時」
私の部屋にある時計は、目覚まし時計1つ。
何故かカーテンの締め切られてる部屋で、目覚まし時計に手を伸ばしライトをつける。
光る文字盤は10時30分を指していた。
(待って、これ、夜の10時だよね)
カーテンを開けると空には月が昇っていた。
さっきまで活動意欲が高まっていたのに、ジェットコースター並に急降下。
後悔に苛まれる。
飲みかけのコーヒー牛乳に手を伸ばしたその時。
机の上に見覚えのない紙が置いてあることに気がついた。
『沖縄行ってくる。お土産何がいいかメールしといて』
文字だけで分かる。
五条だ。
(五条が部屋に来たってこと…?)
ジェット機並の早さで洗面所に駆け込む。
そして、鏡を覗き込んで絶句した。
寝癖は酷いし、顔は浮腫んでいるし、口にはヨダレの跡がついている。
しかも、洋服はくたびれたアヒルのTシャツ。
乙女人生終了の合図が鳴り響く。
しばらく、洗面所の前で座り込み、反省し続けた。