第40章 宵闇
翌日。
僕の適当な、一方で本気である願いが届いたのか。
病院から例の連絡が入った。
仕事を早急に片付けて、病院へ向かった。
開きっぱなしの部屋を覗くと、丁度病院食が運ばれたらしく、千夏は窓の外から手前の病院食へ視線を移したところだった。
「千夏」
「…!?」
支給されたスプーンをすぐに落とした千夏。
看護師さんとは既に顔見知りであったので、僕が千夏の彼氏であることを知っている。
「ごゆっくりー」
僕たちの間を邪魔しないように、小声で捌けてくれた看護師さん。
僕は無言で千夏に近づいた。
「えっと…」
椅子に腰かけて姿勢を低くしたが、千夏の目は逃がさなかった。
「ひ、久しぶり…?」
「まぁ、そう言いたくなるよな」
「…2週間くらい、寝てたみたい」
「正確には1週間と6日。あと、8時間ってとこかな」
大人気ないことな自分で分かっている。
でも、素直な言葉が喉に引っかかって、言いたくない思いやりの欠けた言葉しか出てこない。
「心配かけて、ごめんなさい」
千夏がこれでもかと言うほど目を泳がせている。
僕はため息しか出なかった。
「…正直、自分がどうなってたか分からない。記憶も曖昧で…」
今にも泣き出しそうな千夏。
追い打ちをかけたいわけではないが、聞かなくては気持ちが収まらない。
「油断したの?」
「…油断?」
「千夏が2週間も昏睡状態が続くほどのダメージを負うなんて。千夏の頑張りとストイックさを知ってる僕からしたら、油断したとしか思えない」
「ゆ、油断なんて…してないよ!」
知ってる。
だから、自分で質問したことが、とても腹立たしい。