第39章 咲かぬ桜
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「五条せんせー。なんかイライラしてんね」
イライラ。
これがそんな程度のものなら安心だ。
簡単なカマかけに見事に引っかかって、嘘がバレた千夏。
お互いがお互いを100%知っている必要は無いし、そんなこと重すぎて投げ捨てたくなりそう。
だから、千夏を責めることはしない。
現に、僕自身も悠仁のことを隠してるし。
でも、嘘をつかれたことを少し気にしている。
悠仁に指摘されるくらいだ。
イライラというより、心配。
悠仁の件があってから日は経ってないし。
自分を責めてないか心配。
冥さんを問い詰めるのもいいけど、千夏に重いと思われたくない。
んなことを考えていたら、胸ポケットに入れていた携帯が震えた。
「悠仁〜、お口チャーック」
「ん!」
恵からだ。
僕が適当に振り分けた任務に対する不満だろうか。
「お疲…」
『五条先生。聞きましたか』
声の調子から、これは真剣な連絡。
スピーカーにして携帯を確認する。
他の人から特に連絡はない。
何の話か、と聞くと。
『地図送るんで、そこに今すぐ来てください』
と言って、電話を切られた。
いつもの仕返しだろうか。
「伏黒、元気そうだなっ!」
「元気過ぎて困るよ」
地図を見れば、そこは特に当たり障りのない普通の山中。
こんなところに何が、と思いつつ。
恵の声を思い出して、すぐに足を動かした。