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【呪術廻戦】infinity

第38章 心臓


*****

「えっ。私、可愛くない?」

「こっちのフィルターの方が盛れるよ」



3.2.1の合図とともに、私は目を大きく見開いて携帯のレンズを見た。

しかし、フィルターの効果で大きくなった瞳が、不自然に見開かれて、あまり出来のいい写真とは言えなかった。



「やっぱり最初に撮ったのが良いよね」

「そーだね。さっさと送ったら?」



野薔薇から送られてきた写真を、そのまま悟に転送した。

しばらく待ってみたが、既読にはならない。

まぁ、忙しいのだろう。

ん〜と伸びをして、床にしかれた布団に横になった。



「そういえば、こうやって2人でお泊まりするの、初めてだね」

「…」



ガン無視。

体を起こしてベットに横になる野薔薇を見ると、肘をつきながらファッション誌を見ていた。



「ちょっt…」

「それで?」

「…それでって…何?」



野薔薇はチラリとだけこちらを見て、気だるげにファッション誌をめくった。



「何があったの?」

「別に?」

「んなわけねーだろ」

「何かないと、野薔薇の所に来たらダメなの?」

「お前はそんな女じゃない」



いい音を鳴らしてファッション誌を閉じた野薔薇。

私の耳に大きなため息が届いた。



「あのねぇ。昨日のこと、懲りてないの?」

「懲りるも何も…。私、全然平気だったよ?」

「それはあんたが強すぎるから!そうじゃなくて…!あーもーー!何であんたのことで、こんなにイライラしなくちゃいけないの!?」



今にもファッション誌を破きそうな勢いだった。



「本当に何もないんだよ。ただ…」

「…ただ?」



器用に眉を片方だけ上げて、睨みつけてくる野薔薇。

私も器用に眉を8の字にして、申し訳なさそうに笑った。



「今は悟に会いたくなくて」

「喧嘩?」

「んーん」



気持ちいいほどの笑顔を浮かべた私を警戒する野薔薇。



「…何があったわけ?」

「言えない。でも…とっても嬉しいことがあった」



悟に会ったら、気付かぬ間に口が滑ってしまいそう。

それに、悟に隠し事はしたくない。

だから、傑が決心してくれるまで、できるかぎり悟と話したくない。



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