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【呪術廻戦】infinity

第38章 心臓


*****


「冥冥さん、帰ろ!」

「…迷惑な小娘だこと」



少し酔っ払った足取りで(シラフ)、タクシーに乗り込んだ。



「それで?」

「何が?」



冥冥さんはニヤッと笑って、長い指を私の顎に添わせた。



「私に嘘をつかせた代償は重いよ」

「ふふ、分かってますって」



財布から1万円札を取り出して、冥冥さんに渡す。

冥冥さんは少し驚いていたが、遠慮することは無かった。



「浮気かい?」



お札に軽く口付けした冥冥さんは、足を組みかえていやらしく笑った。



「んなわけ」



浮気ではない。

それは本当にそう。



「悪い女だね」

「なーんか、誤解を生む発言だなぁ」

「ふふ。また千夏は私に借りを作ってしまって…」

「えっ、お金あげたじゃん」

「これは返すよ」



諭吉と私を同時に叩く冥冥さん。

少しチリっとしたおでこをいたわった。



「…ったく。一体私は何をすればいいわけ?」

「ひとまず今まで通り。次に交流会」

「交流会ってビジネスになる?」

「ビジネスは…」

「そこら中にあるんだよね」



冥冥さんは目をつぶって、ゆっくりと頷いた。



「千夏は扱いやすくて助かるよ」



昔は本当に冥冥さんが嫌いだった。

いい人なのは分かっているけど、お金を中心に生きている人はあまり信用出来なかった。

今では、お金で動く冥冥さんが大好き。

この歳になると、裏表がわかりやすい人がどれだけ貴重かを知る。



「そして、金になる」



私たちは雇用関係。

ただそれだけ。

私は冥冥さんの利益のために働くし、冥冥さんは私のために働く。

この単純な関係は、ちょっとやそっとじゃ壊れない。



「はは!ずっとついて行きますよ、めーいめーいさん!」

「ふふ…」



私達は含みある笑いを車内に響かせた。


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