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【呪術廻戦】infinity

第37章 ユートピア


*****


そういえば。

と、思い出し、近くのデパートに買い出しに出かけた。

悟がいない日は、家事を頑張る理由がないので、しばらく買い物に行かなくてもいいように、身の回り用品を揃えて引きこもることにしている。


(お菓子、お菓子…、鶏肉は冷凍して…)


食品売り場は夏だとキンキンに冷えて寒い。

外はとても暑いのに、室内とのギャップが辛い程。


(つめてっ…)


ループタイのキー部分がひんやりとして、思わず体が震えてしまった。

キー部分は石でできているようで、この食品売り場において相性が悪い。


値引き商品が多かったため、カートが満タンになる。

少し減らそうと食品売り場をひたすら歩く。

そのおかげでお金が飛んでいくのを防げた。


(重っ!)


ビニール袋が破れそうだと心配になる。

それよりも、私の腕が心配だ。

千春に助けを求めたが、当然無視される。



「重そうだね。手伝おうか」



突然の声に足がもつれて、ビニール袋が地面に引っかかる。



『千夏、走れ』

「えっ…」



そこで千春が背中を押したため、体が前のめりになり膝から倒れた。

幸い、ビニールから商品は出なかった。



『走れ…!』

「ちょ…」



膝をいたわる余裕もなく、声と気迫に追いやられる。

突然何を言うのかと思い、少し頭にきていると、再び声が飛んできた。



「全く。2人はまだ喧嘩してるのかい?」



時が。




止まる。



『千夏!』



千春の声も。

セミの鳴き声も。

何もかも。



聞こえなくなった。



体が震える。

汗か涙か分からない液体が、アスファルトに模様をつける。



『立て!逃げr…』

「千春。少しどいてくれ」



何をしたのかは分からない。

ただ、千春の声が聞こえなくなった。



「これは…卵が無駄になっちゃったな」



息が上手く吐けない、吸えない。

熱々のアスファルトに触れている手と膝が悲鳴をあげていても、胸を抑えることで精一杯。



「立てるかい?」



見覚えある手が差し伸べられた。

手を取りたくない、取ったらダメだと分かっているけど、無理だった。

震える手をゴツゴツした男らしい手に重ねた。





「傑…!」






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