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【呪術廻戦】infinity

第37章 ユートピア


*****


命あるものを助ける、か。

今までの話が全て噓のようだった。



現実は理想とは違う。

だから、俺たち呪術師は、呪術師としての生き方を別に持つことが求められる。

でも、八乙女さんはその二面性を持ち合わせていない。

それは常に理想を打ち砕かれているようなもので、現実逃避に近いと、俺は思う。

けれど、八乙女さんは現実逃避なんかではなく、本気でその理想を追いかけている。

正直言って、バカにもほどがあると思う。

呆れて笑ってしまう。



「禪院先輩は、呪術師としてどんな人を助けたいですか?」

「あ?別に私のおかげで誰が助かろうと知ったこっちゃねぇよ」

「聞かなきゃよかった」



そう思いつつも、それも一つの選択なのだと思う。

禪院先輩はとても素直な人なのかもしれない。



「ああ?…てか、千夏さんみたいな質問してんじゃねーよ」



禪院先輩のボヤキは完璧に的中していた。



「あの人とそういう話するんですか?」

「最近は会ってないけど、前に稽古つけてもらってたときに少しだけ。今なにしてんだろーな」

「俺、さっきまで一緒にいましたよ」

「な…!あの人、今高専いんのか?」

「いや、少し手前で用事思い出したって言って、どっか行きました」



どうやら、昨年の冬から八乙女さんのハードスケジュールを考慮して、声をかけるのを避けていたらしく、禪院先輩はいらだちを隠せていなかった。

少し前まで八乙女さんは東西南北飛び回っていたので、俺も話すのは昨日が久しぶりだった。



「くっそ。タイミング逃した」

「連絡したらどーです」



「伏黒!!!!!」



釘崎の元気な声で俺たちの会話は終了。

心の底から交代してほしかったのか、あるいは八乙女さんの会話が聞こえたから邪魔したのか。

どちらであるかは定かではないが、とりあえず俺も稽古に参加しなくてはならない。



強くなるため。

己の道を見つけるため。



俺は頑張らなくてはいけない。



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