第1章 千夏様
ポケットから油性ペンを取りだし、掌に文字を書く。
そして、灰原の肩を叩き、廊下の窓を開けた。
「ちょ、八乙女さん!?」
「だーいじょうぶ。場所の目星はついてるから」
本当は目星なんてないけれど。
あいつらのいる場所を探すなんて朝飯前。
なんたって、喧嘩をしているんだから。
喧嘩は喧嘩でも、ただの喧嘩ではない。
呪術師同士の喧嘩だ。
耳を済ませれば、誰だって場所くらい分かる。
「ははは!もう少し本気を出してくれてもいいのに!」
「はぁ?殺さないように頑張ってるんだよ。お望み通り、本気出してあげ…」
「やってる、やってる♪」
朝、いつものように登校して『おはよう』というように。
ごく普通にケンカする2人に近づいた。
勿論、笑顔を忘れずに。
2人は私の顔を見てため息をついた。
これも、いつものことだった。
「そろそろ来る頃かと思ったよ」
「どうして?」
「灰原が興奮して去っていったから」
彼の名前は夏油傑という。
長髪、細い目、変なしゃべり方。
そして、クズ。
「あのね、男の熱き戦いの邪魔するなんて。千夏、頭おかしいんじゃないの?」
私の頭を馬鹿にするように叩く彼は、五条悟という。
白髪、グラサン、人を馬鹿にすることしかできない。
そして、こいつもクズ。
ちなみに、2人をクズと呼ぶのは、私の親友である硝子譲りである。