第37章 ユートピア
「野薔薇、どうだった?」
「まあ、普通って感じです」
「そ」
恵はこれから学校に戻ると言うので、私もついていくことにした。
「八乙女さんって、情とかあるんすね」
「恵こそ、意外と友達想いじゃん」
「あそこに寄ったのはたまたまです」
ポケットに手を入れて、めんどくさそうに歩く恵。
どうやら、京都姉妹校交流会に人数合わせで出場することになり、これから真希たちと”遊ぶ”らしい。
ワクワクしている真希の顔が思い浮かぶ。
「八乙女さんたちの頃にも、交流会ってあったんすか?」
「んー…。あったけど、なくなった」
胸元で揺れるループタイを手に取った。
そういえば、昨日これに悟が興味を示していた。
今更すぎて、特に何も言わなかったけれど、何か気になることでもあったのだろうか。
「なくなった?」
「そう…っていうか、その紙袋。何?」
「これ、ですか?」
恵は雑に袋の口を開けて、中身を取り出した。
「貰い物です。いりますか?」
「もみじ饅頭…。欲しいけど、食べたいけど…」
「別にいいですよ。八乙女さんがもらわなかったら、釘崎に渡るだけですから」
野薔薇の対する謎の対抗心で、紙袋を受け取った。
「誰からもらったの?」
「ん、まぁ…」
「…?」
箱からまんじゅうを一つ取り出し、口に放り込む。
こしあんが滑らかで、とても美味しい。
「一つ聞いてもいいですか?」
「ん?」
恵が質問なんて珍しいと思う一方で、答えられない質問、例えば算数とかだったらどうしようと焦っていたが、顔には出さなかった。
「人を何人も殺していて、社会からつまみ出された人が、呪いの被害に合っていたら。八乙女さんはその人を助けますか?」