第36章 不慣れ
あっという間にズボンを脱がされ、両手を頭横で固定された。
「いい?」
「それ、今聞くこと?」
軽くて長いキスをされ、わざとらしく音を立てられる。
「…やっぱり、今日は気分じゃない」
「ここまで脱がされておいて、それ言う?」
組んでいた手が解かれ、悟の首に手を回して起き上がる。
「だって…」
「あー、泣かないで!」
よしよしと頭を撫でられ、私はそのまま悟の肩に顎を置いた。
「ごめんね。調子乗りすぎた」
「…大丈夫。分かってるから」
「…ほんとごめんねぇぇ」
悟には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだけど、今まで知り合いの死に対する大嫌いな感情を理由に、悟に抱いてもらったことがある。
正直、相手が悟じゃなくても良かった時もあった。
とにかく、違うことを考えたくて、忘れたくて…。
必死だった。
だから、悟は本来ふさわしくないタイミングで私を抱こうとしたし、その理由を私は理解し、感謝している。
「生きづらい」
なんでもっと楽に生きられないんだろう。
ことある事に、こう呟いている気がする。
「僕がいるよ」
その度に、この笑顔に救われていた。
憎いほどキラキラした、この笑顔。
これがあれば、私は道を間違えない。
「…どこにも行かないでね」
「行かないよ」
「私のこと、捨てないでね」
「捨てるわけないじゃん」
私は小さく笑った。
「なーにー?」
「…嬉しい」
「何回でも言ってあげるよ。僕はこのまん丸としたお顔の持ち主を、一生かけて幸せにしますっー!」
「まん丸は余計だっ!」
悟はとっても優しい。
そして、とても”完璧”でいたがる。