第36章 不慣れ
「妬いてくれたの?」
「…正直焦った」
クッションに顔を埋める悟が可愛くて仕方ない。
大好きな相手に妬かれて、嬉しくない女がいるだろうか。
「悟っ♪」
「なn…」
不貞腐れている悟の頬にキスをして、そのまま唇にもキスをした。
「私の唇は悟だけのものだよ」
現実を見ないためには、いくつかの方法がある。
私に残されている手段のひとつは、悟に没頭することだった。
「もぉ…。そんなこと言われたら、怒れなくなる」
「まだ怒ろうとしてるの?」
「今回の件には下積みがあるの!千夏が僕以外を男として見ないせいで…まぁ、男として見ても怒るけど。とにかく、危機感無さすぎ!」
「私に逃げ道はないわけ?」
「ひとつだけあるよ。おりゃ!」
悟が押すから、そのまま倒れてしまったではないか。
夏用に買ったひんやりマットの上で、横になる私。
「大人しく抱かれてください」
絶対に。
そう言うと思った。
「日本に帰ってきてから、全然休めてないんですけど」
「これも一種の休息方法でしょ?」
よく分からない理論を展開され、あっという間にシャツのボタンを全て開けられた。
「そんな可愛い顔しても、むーだ♡」
可愛い顔をした覚えはない。
目の前の人間には、他人の気持ちを読み取る能力に、少々問題があるようだ。
「…1回だけだからね!」
「えっ。1回で満足出来るの?」
そして、畳み掛けてくる。
「千夏、僕より性欲強いくせに」
「…」
「ほらほら。少し腰持ち上げて」
本当にいやらしい男。
デリカシーのない男。
そして、そんな悟に呆れた怒りを感じていながらも、素直に腰を持ち上げている私。