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【呪術廻戦】infinity

第36章 不慣れ




その日の夜、私は不思議と目が覚めた。

隣にあるはずの温もりを探しに寝返りを打つと、キッチンで照明に照らされる悟の横顔が見えた。

次の瞬間、悟は歯をむいてステンレスのシンクを叩いた。


自分で出した大きな音に触発されて、悟がこっちを向いたので、慌てて目を閉じた。


足音から、悟がこっちに向かってくるのが分かる。

ここで何もなかったかのように起きて、話をするのがいいか。

それとも、素直に見ていたと言って、話をするのがいいか。

そんなことを考えながら、なるべく顔に力が入らないように呼吸を続けた。



さらっと頬をかすめるくすぐったい感触。

触れているようで触れていないようなものに、なるべく集中しないように気をつける。



「…はぁ」



鼻に柔らかいものが当たった。

そして、悟は少し冷えた布団に潜ってきて、器用に私を引き寄せた。



「ん…」



思わず漏れてしまった声に、特に反応はなかった。



寒いのか。

悟は私を極限まで抱き寄せ、まとわりついてきた。

少し息苦しくて、胸が痛かった。

胸が痛くて、思わず涙が滲んだ。



「…クソッ」



そう小さく呟いた悟は、尚も私を引き付けた。

流石に苦しくて、たった今起きたように顔を上げた。



「せまぁい…」

「あ…。起こしちゃったね、ごめん。苦しかった?」

「少し…」

「ごめんねぇ…」



こんな会話があったからと言って、私達の距離が改善されることはなかった。



「寝られないの?」



私は馬鹿らしくとぼけて尋ねた。



「ムシムシしてると、どうもね…」

「離れようか?」



私が腰を引くと、すぐに戻された。



「だめ。千夏、抱いてないと寝れない」

「…私も悟がいないと寝れない」

「今までぐーすか寝てたじゃん」

「そんなこと言うなら離れます」

「ごめんなさぁい」



本当は悟に全て話してもらいたい。

楽しいことだけでなく、悲しい気持ち、辛い気持ちも教えて欲しい。

でも…。



「…辛いことあったら、いつでも聞くからね」

「うん。頼りにしてる」



この脆い笑顔を前に、追及することなんて出来なかった。



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