第5章 空蝉
『実はさ、天元様のご指名の元、ある任務に駆り出されてさ〜』
「天元様?」
考えること数秒。
「誰だっけ。聞いたことはあるんだけど…」
『あはは!俺以下だ、俺以下のやついた!』
携帯の画面が揺れる。
千夏、天元様知らないってーー、あはは。
そんな声が徐々に小さくなる。
どうやら、あちら側の携帯が傑に回ったようだ。
「天元様を知らないの!?」
「だから、聞いたことは…」
「だから常識がないって言われるんだよ」
歌姫も、硝子も。
2人して途切れなく煽ってくる。
そして、電話口からも。
『悟でも天元様のことは知ってたよ。千夏、本当にヤバい』
全員に言われて、さすがの私も凹む。
帰ったら先生に呪術界の常識を1から教えてもらおう。
多分、面倒だから聞かないと思うけど。
「天元様だか、天丼様だか知らないけど、そこの女の子は誰?」
『天元様。未来のね』
「……頭おかしくなったの?」
『天元様も知らない人には、何一つ理解できないだろうな』
歌姫と硝子は前を歩いている。
ずーーーっと向こうを。
冥冥さんは気づいたらいなくなっていたし。
こんなにまとまりのないグループは他にないだろう。
『ねー、傑ー。俺、やっぱり子守りは嫌いだわー』
『悟が携帯を渡してきたじゃ…』
『妾だってお前のことは大嫌いじゃ!』
そして、あちら側もまとまりがない。