第35章 むかーしむかしあるところに
「と、その前に。女の子にはある特徴がありました。これは女の子自身も気づいていないかも知れません」
「…特徴」
「女の子の術師の能力は並々。”本人が”特別に強いわけではありませんでした」
「…もしかして、乙骨先輩と…?」
五条先生はニヤリとして、話を続けた。
もし、八乙女さんが乙骨先輩と同じタイプなら。
今まで妙に引っかかっていた全てが、繋がり、解決する。
俺は少しスッキリしていた。
「誰もが女の子の強さ、危険さは、傍にいる姉のせいだと思っていました。女の子自身も、そう思っていました。今も思っているかもしれません」
姉の存在も、やっと腑に落ちた。
「しかし実は、女の子の呪力量は平均を遥かに上回るものだったのです。さて、ここでクイズ。何故、女の子は並の術師だと思われていた?」
「姉の存在が八乙女さんより遥かに強力だったから、ですか?」
「千夏じゃなくて、女の子ね。それも1つの要因だ。それよりも、女の子自身に欠点があった」
「……分かりません」
「なんと。女の子の体は、女の子の呪力量に耐えられなかった。弱すぎたんだよ。だから、常に女の子の呪力を姉が代わって”消費”したり、本人の感情を整えて呪力を抑えたり…。1番効果的だったのは、女の子の呪力を凝縮して物に込めてしまうこと」
体に合わない呪力量。
そうはいっても、五条先生や乙骨先輩程ではないと言っていた。
しかし。
「そこで、事件が起きた。女の子は少々感情のコントロールが苦手でね。女の子の感情が暴走してしまったんだ。今までは姉が宥めていたんだけど、姉がそれを諦めた。諦めてしまうほどの、ショッキングな出来事が起きたんだ」
「…それは?」
「…女の子の友達が、道理に反したことをしてね。まあ、ここは突き詰めるところじゃない」
五条先生の声が少しトーンダウンした。
しかし、次にはまた明るくなっていた。