第35章 むかーしむかしあるところに
「むかーしむかし、あるところにとーっても可愛い女の子が産まれました」
(…は?)
「その子は生まれて間もなく捨てられ、心優しき女性に拾われました。そこで、女の子は3人の姉をゲット」
五条先生はニヤッとしたが、俺には何が何だか分からなかった。
突然こんな話をされて、状況が呑み込めていないのかもしれない。
「しかし、その3人の姉は、女の子が3歳の時に目の前で殺されました」
「…!?」
「部屋の中、血まみれだったらしいよ」
俺の知ってる昔話は、桃太郎とか、ウサギとカメとか。
平和なものが多いが。
この時は、随分残酷な昔話だな、と思った。
そして同時に、昔話の裏を探していた。
「それから、女の子は施設に引き取られました。そこでは無機質な時間が流れ続けました。そして、自分の好奇心を制限する人のみを敵とし、敵を避け続けました。その敵には自分の姉も含まれていた時期もありました」
「…姉は死んだんじゃないんですか?」
「うん、死んだよ」
それでね、と五条先生が続けるものだから、この矛盾を抱えたまま話の続きを聞くことになった。
「そして、女の子が小学校に進学すると、あっという間にいじめられ、あまり学校に行かなくなりました。そんなある日のこと、女の子に運命の出会いが。なんと、たまたま、偶然!とーーってもカッコイイ男の子に出会いました」
何となく。
話が見えてきた。
「毎日のように2人は遊びました。そして、1年ほどの月日が流れると、2人は会わなくなりました」
「運命の出会いなのに…。説明雑じゃないですか?」
「色々あったんだよ」
より、話が見えてきた。
「そこから女の子は学校に通うようになり、中学生になりました。そこで、なんと!事件が起きちゃいます!」
五条先生は腕を広げて、天を仰ぐ。
俺は気にせず歩き続ける。
「女の子は同級生に怪我を負わせてしまいました!そして、その女の子は術師に拘束されちゃいましたとさ」
次に、あの男の子が出てきたら。
俺の仮説は正しいものとなる。