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【呪術廻戦】infinity

第35章 むかーしむかしあるところに


*****

がたん、がたん。

規則的に襲ってくる揺れには既に慣れ、隣の彼女は居眠りを始めた。

元気な子供達と遊んだのなら、当然の眠気だ。



プルルルルル…♪



千夏の携帯の着信音だ。

勝手ながら体をまさぐり、画面を見させてもらうと、予想通りの人からだった。



「もっしもーし」

『おい!今どこにいるんだ!』

「昨日の朝連絡したよね、そのまんまですよ」



千夏の携帯から僕が出たことに対する指摘はなく、学長は言葉にならない声を出した。



「千夏は隣で寝てます。仕事は既に終わってます。今から帰国予定。はい、他に聞きたいことは?」

『千夏が寝てるのは都合がいい。悟、よく聞け』



国際電話だからなのか、学長はいつも以上に端的に話した。



『虎杖が死んだ』

「…はい?」



僕がいない間に、そっちであったことを聞いた。

千夏が眠っていて都合がいいという意味がよく分かった。



『千夏に伝えるかどうかはお前に任せる』

「流石に日本に着くまで言えないねぇ。拘束具持ってないし」

『詳しくは戻ってから』

「了解」



電話を切ると、昨日の晩から何度も通知が来ていることがわかった。

自分の携帯の方も同様だった。



「ん…」

「お願いだから、まだ寝ててね〜…」



催眠術をかけるように、千夏の頭を繰り返し撫でた。


もし、このことが千夏に知れたら、どうなることか。

考えただけで笑えてくる。



千夏が1度寝たら起きないタイプの人間で助かった。

ホテルに寄って荷物を受け取り、再びタクシーで空港まで向かっても、千夏は起きなかった。

千夏が起きたのは空港に着いてから。

もちろん、例の件は千夏には言わなかった。



「もう帰るの?」

「別の仕事が入ってね」

「私も?」

「んーん。とりあえず、僕だけ」

「とりあえず…?」



何かを勘づいた千夏は、僕のことを疑っていたが、正解にたどり着くことは無いだろう。

…僕が伝えるまではね。


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