第35章 むかーしむかしあるところに
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「あれ、人がいる」
「ほんとだ。立ち入り禁止にしとけーって言っといたのに」
俺たちはギャングだ。
ここはギャングのたまり場。
そこにカップルがやってきた。
「どーやら、関わったら危ないタイプの人達みたい」
「ありゃ。悟、説得してよ」
現地の人でないことは、振る舞いを見ればわかる。
1人は北欧、1人はアジア系のように思える。
俺らが威嚇しても全く怯まないところから、言葉が通じていないのかと思ったが、男側が話しかけてきた。
危ないからここをどいて欲しい、などと。
「んー。無理みたい!」
「状況見れば分かるわ!」
拳銃を見せても、全く動揺しない。
ギャングに楯突くとどうなるか、知らないのだろうか。
「ほら、千夏」
「変なとこ触んないでよ」
何を思ったのか、男が女を抱き抱えた。
そして、消えた。
そこにいた誰もが驚き、辺りを見回した。
数秒後、”上だ”と誰かが叫ぶと全員が空を見上げた。
しかし、そこには誰もいなかった。
当たり前だ。
人間が空を飛ぶなんて、ありえない。
それから、あの人達を手分けして探した。
痛めつけろ、と命令されてのことだ。
あの人達が見つかったのは、それから1時間ほど後だった。
先程より幾分か日が沈み、女が美味しそうに食べていたリンゴに、少し惹かれた。
男が”もう安全だから、トンネル使っていいよー”と言った。
珍しくボスが前に出て、サイレンサー付きの銃をぶっぱなした。
しかし、真っ赤な鮮血は見えなかった。
もう1発撃っても結果は同じ。
ボスがイラついて、今度は女に焦点を合わせた。
女は相変わらずリンゴを食べている。
ボスが撃った。
女には当たらなかった。
何故なら、弾が飛び出るより前にボスの拳銃が飛ばされたから。
「早く帰ろ」
「そだね」
すると、再び2人が消えた。
もう誰も探そうとしなかった。
後にこの日の出来事は、数ヶ月前から定期的にこの場で起きる神隠しに絡んだものだとされ、地元の人はトンネルに近づくことはなくなった。