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【呪術廻戦】infinity

第35章 むかーしむかしあるところに


***

「掘った芋いじるな…」

「それじゃあ、時間しか分からない」

「どういたしまして…」

「千夏に髭は生えてないでしょ」



ある日、ある時、マーケットの中をぶらつく男女がいました。



「真面目に英語の復習したら?」

「フィーリングで行けるっしょ!私、英検5級持ってるし」



連れの男はやれやれ、と言った感じだ。

確かこの言語は日本のものだ、とスパイス売の男は思いました。



「Hey!ワン アーポー プリーズ!アイ ワナ バイ アーポー!」



得意げに不格好な英語を話し、真っ赤に熟れたリンゴにかじりつく女。

男が雑に褒めると、女の鼻はさらに高くなりました。



「あっ、あれ美味しそう!」



そう言って走り出した女に向かって男は手を振ると、こちらに近づいてきました。

女とは反対に流暢に英語を話す男は、この近くにあるトンネルについて聞いてきました。

あそこは現地の人でもあまり訪れることの無い、既に使われていない場所です。

今はギャングが溜り場だと伝えると、男は話のお礼と言って1番人気のスパイスを100g購入した。

このトンネル付近には観光地はないと教えると、男はにへっと笑って、先程までの流暢さが嘘のように



「ノープロブレム!」



と言いました。



「あれ、悟ー!?」



片手にリンゴ、片手に麺類を持つ女が、道の真ん中で叫びました。



「んじゃ、bye」

「あ、ありがとうゴザイマシタ」

「おっ、日本語。上手ですねー」



男のサングラスの隙間から、宝石のような瞳が見えました。

もしかしたら、彼は日本人ではないのかもしれません。

私はスパイス売として20年以上働いていますが、彼のような人種にあったことはありませんでした。

毎日世界の広さに驚きます。



「あー!悟!勝手に移動しないでよ」



もしかしたら、芸能活動をしている人なのでしょうか。

それなら、サングラスの意味がわかります。



「また食べ物買って」

「美味しそうでしょ?」

「1口……ん、美味いね」



今まで数え切れないほどの人を見てきましたが、この人達の雰囲気は特別です。



「オシアワセニねー」

「おっ、日本語!」



これだからこの仕事は辞められない。

人間観察に飽きるまで、私はスパイスを売り続けます。
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