第34章 諦め半分、夢半分
「千夏〜……無事で良かった…!」
「大袈裟だな。大したことないって」
「バカっ!何で術式使わなかったの!」
「だって、そしたら…」
千夏が襲われた。
任務の帰りに呪詛師がやってきて、千夏目掛けて攻撃をしかけた。
一緒にいた硝子には目もくれず、呪詛師は千夏ばかり狙った。
硝子に一報をもらった傑は幸い近くにいた為、すぐに駆け付け応戦。
呪詛師を拘束し、高専関係者に引き渡し、今に至る。
俺がここに着いたのは、引渡し直後だった。
「呪詛師か。初めて見たな」
「…」
「…悟?」
「あ、何?」
「どうした?千夏なら怪我はないぞ」
「ん、それは良かった、良かった!」
傑に怪訝な目で見られたが、気にせず千夏に近づく。
「ドンマイ、千夏」
「ホントだよ。運悪すぎ」
腕を広げて抱きしめて欲しいと願う千夏。
いつもだったら流れるように手を伸ばすが、今日は無視した。
後ろで千夏がどんな顔をしているかは知らないが、目の前で目を開く傑を見れば大体分かる。
「んじゃ、ラーメンでも食べて帰る?」
「別に構わないが…」
傑が耳を貸せと手招きする。
「どうした?」
「別に?いつも通りだけど。傑こそ、らしくない顔してんじゃん。大丈夫?」
大丈夫だ、と言って傑は俺の手を払った。
その日からだ。
千夏の存在がとても脆いものだと、今まで以上に危機感を感じたのは。