第34章 諦め半分、夢半分
「もう…!」
「怒らないで~」
「怒ってない!!」
「怒ってんじゃん。はいこれ」
「…おいし」
「くっ。たんじゅーん」
オレンジ味のグミを渡してきた悟と、それで買収された私は、人目を浴びながら散歩中。
「”大志の誓い”だって」
「面白そう。やろーよ」
「いいよ」
自分の夢や希望を紙に記入して投函。
再びこの地にやってくれば、その誓いを見ることができるらしい。
「夢や希望か…」
「残酷な言葉だなぁ」
「しっ。そういうこと言わない!」
残酷だと言いながらも、すらすらと記入する悟。
その反対に、私は手が止まっていた。
私の夢。
それは悟と自由に生きること。
私の希望。
悟が普通の人になって、苦しい思いをしないで済むこと。
どちらも現実味がなくて困る。
呪力・呪いがなくなればいいのに。
「まだ書けないの?」
「もうちょっと」
何とか絞り出して、言葉をまとめて簡潔に。
書き終わると、それはそれで簡単すぎたかと心配になるが、それはしっかり私の望みだった。
「じゃあ、鐘鳴らそう」
「一緒に鳴らしたい!そっちの方がご利益ありそう」
「そうだね」
私の手に悟の手が重なり、ひもを2回引っ張った。
そして、クラーク博士の銅像に再び会いに行き、私達が頑張れるようにお願いした。
最後にポストに用紙を投函し、私たちは同時に息を吐いた。
「千夏は何て書いたの?」
「クラーク博士のように頭が良くなりますようにって。悟は?」
「今年こそヘラクレスオオカブトを見つけられますようにって」
「今までそんなの探してたの?」
「さっき探そうって決めた」
「ふふ。バカらし」
「男の夢さ」
「はいはい」
本当はもう少し観光したかったけれど、飛行機の時間が迫っている。
お土産を東京に送って、私たちは空港に向かった。