第33章 紙一重
「な、何すんだい!!お前は一体…!?」
「私は八乙女千夏。名前くらい聞いたことあるんじゃないか?」
おばあちゃんの顔が引き攣る。
「お前が…!死んだんじゃ、なかったの…」
「色々あって…」
すると、部屋の壁から何かが飛び出してきた。
針だ。
毒でも塗ってあるのだろう。
当然、避ける。
ここは忍者屋敷か。
「勝手なことを言ってるのは分かってる。でも、お願い。野薔薇が望む未来を応援してあげて」
「…何が目的なの」
「何も。強いて言うなら…私も教える立場に立ちたかったから、かな」
おばあちゃんの胸元を離すと、おばあちゃんは力なく倒れた。
恐がる野薔薇に近づき、もう一度頭を撫でた。
「貴方に推薦されるか、私に推薦されるか。どっちが良いのかくらい分かるでしょ」
そして、野薔薇に語り掛けた。
「もし、どうしても力が必要になったら、呪術高専に連絡して私の名前を出して。そしたら、誰かが助けてくれるから」
「…八乙女、千夏」
「そう。1回しか言ってないのによく覚えてるね。利用できるものは利用して、理想の未来を手に入れるんだよ」
「…どこ、行くの?」
「ん、私?私は…そうだな。とりあえず海外」
「もう会えない?」
「…会えるよ。会いたい?」
「…別に」
「素直じゃないなぁ」
ふみには悪いと思ったけれど、私はこの後すぐにこの地域から逃げた。
そして、名前が知られていない土地に移動して、冥冥さんと合流した。
凄く不機嫌な顔をしていたけれど、私が金になりそうな仕事を提案すると、急に乗り気になって笑顔が見られた。
その後もまだまだ不幸は続いたが…。
それはまた別の話…。