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【呪術廻戦】infinity

第33章 紙一重


*****


あれ。



ここは。



どこだ?



「…野薔薇?」

「っ…!」



右手には小さな野薔薇の掌。

左には何もない。



「な、何?」



野薔薇の顔は怯えていた。

何に?

もしかして、私に?



「…あぁ、そっか」



周りを見る限り、私が大暴れしたのだろう。

徐々に記憶が鮮明になっていく。

買い物から帰った家の人があの惨事を見て、私を疑って批難して。

追い出されるようにここに来て、暴れて。

偶然野薔薇がやってきて、何か声をかけて。

今、こうして並んで歩いている。



「野薔薇の家に行くんだっけ?」

「そ、そう…だけど」

「おばあちゃんに話を通さないとね」

「う、うん…」



私はこれから海外に行く。

冥冥さんと合流して、しばらく生きようと思う。

冥冥さんがそれを了承するかは分からないけれど、多分大丈夫だ。



「野薔薇かい?」

「あ、うん…」



野薔薇のおばあちゃんは、絵に描いたような年寄りだった。

私と野薔薇の様子を見て、おばあちゃんは細い目を微かにあけた。



「この人、私の友達で…」

「友達?随分歳が上な気がするけれど」

「そうだけど、友達」



暗くてオレンジ色の光だけが頼りの6畳程の部屋。

木の匂いがして、線香の香りもする。



「単刀直入に言いますね」



野薔薇がビクッとして、私を見上げた。

私はゆっくりと微笑んだ。

すると、野薔薇は一歩下がって、私の後ろに隠れた。



「これから野薔薇に術師のことを教えてあげてください」



おばあちゃんは眉をひそめて、私を睨んだ。



「おばあちゃん、術師でしょ?色々教えてあげて。それで、野薔薇が術師になりたいって言ったら、それを応援して。東京に行かせてあげて」



おばあちゃんはため息をついて、だるそうに首を振った。

赤の他人が口出しをしないで欲しい、と…。

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