第33章 紙一重
それから3ヶ月の間、千佳さんに会えなかった。
容態が優れないと、ある時は家政婦さん、ある時は千佳さんのお兄さんに言われて帰された。
千春の誕生日が近いと言っていたが、もうそろそろ私の誕生日が来てしまう。
出かける約束はいつ頃実現するのだろうか。
「今日は野薔薇達、学校だし…」
『いつまであの子たちに構うつもり?』
「野薔薇が飽きるまで。ふみに関しては単なる友達付き合いだから、どっちかがうんざりするまでかな」
『…何歳離れてると思ってんの』
「友情に年齢は関係ないんです。それに、千春だって野薔薇の成長具合見てるでしょ?」
『まぁ』
「どう?」
『まだまだ。そもそも、千夏もトレーニングしなさいよ。最近、たるんでない?』
「うっ…。術師をやめろって言ったり、トレーニングしろって言ったり…どっちなのさ」
『私はどっちでもいいよ。千夏がグダグダしてるから、両方進めるしかないの』
とりあえず今日は自分の体を鍛えることに決めた。
八乙女家には千佳さんの権限で、私用のトレーニンググッズが置かれている。
その中から必要なのだけを蔵から取り出し、近くの河原に出かけることにした。
「おにーさーん!夕方頃戻ってきまーす」
「いちいち報告するな」
「……」
「……気をつけて」
「はーーい!」
お兄さんはおでこのシワが凄いけれど、怖そうに見えるけれど(実際怖いのだが…)、とってもいい人。
そして、千佳さんを溺愛している。
聞くと、小さい頃から理不尽な親に振り回され、どんなときも兄妹で助け合いながら生きてきたらしい。
『遅い。もっと早く』
「んな、無茶な…」
『死ぬぞ』
「…わーかったよ!」
私も姉妹で助け合いながら生きてきたけれど、千春は容赦なく私を痛めつけてくる。
飴と鞭の、鞭の方だけが発達しているのだ。
お兄さんを見習ってくれないかなぁと、思うこともある。