• テキストサイズ

【呪術廻戦】infinity

第33章 紙一重


*****


「千佳さーん!」

「あら〜。今日も来てくれたのね」

「千佳さんに会いたいもん!」



千佳さんは普段からベットの上にいた。

移動する時は車椅子。

歩けないわけではないけれど、ストレスを感じるらしい。



「あのね、あのね!」

「落ち着きなさいって。もう19歳でしょ?」

「そうなの!そこで提案なんだけど、今度一緒に買い物行こうよ!」

「買い物…?」

「そう!千佳さんと出かけたい!」



そうねぇ、と言って、千佳さんは首を捻った。



「…約束はできないよ?」

「いいよ!ずっと先になってもいいから、絶対に行こうね!」

「ふふ。分かった。いつか行こうね」



最近、千佳さんの体調が優れない。

それを理由に門前払いをされることが多かったため、千佳さんに会うのは久しぶりだった。

愛華はというと、先月お母さんが待つ東京へ戻り、今は看護師として働いている。

時折通話をしては、毎日大変だと愚痴を零していた。



「そっかぁ。千夏も19歳なのねぇ。この冬が明けたら成人か〜」

「そうだよ!大人の女性!」

「この子達も…大人だね」



私の横に座っていた千春達の存在を確かめるように撫でる。

ハッキリと見えているわけではないらしいが、千春は認識されてとても嬉しそうだった。

千秋と千冬もいるけれど、2人は数ヶ月前から自我を保つことが難しくなっていたため、千春が眠らせて姿だけ浮かばせていた。



「あっ、ちょっとトイレ行ってくるね!」

「はいはい」



滅びた過去は完全に元には戻らない。

けれど、私は今の現状に満足している。

恋愛とも友情とも違う愛情の形に、私は幸せを感じていた。



「ふふふーん…♪」



悟達に会えなくて、とても辛い。

けれど、その絶望の中で1番…。

考えられる内で1番の幸せが、今この瞬間、具現化されている。
/ 1115ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp