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【呪術廻戦】infinity

第33章 紙一重


*****

用事を終えたものの、直接家に帰るのはナンセンスだ。

千夏のことだから、この時間になってもまだトレーニングしているだろう。

そう思って、千夏のお気に入りの格闘場に向かったが、電気はついていなかった。



「ふむ…」



と、なれば。

生暖かい風を感じながら、外に出た。

途中、自動販売機で飲み物を買った。



千夏は無事か、ぶっ倒れているか。

今日は…後者だった。



千夏はトラックの第2レーンに綺麗に収まって倒れていた。

腰まで伸びた綺麗な髪の毛が、雑に広がっていた。



「千夏、お疲れ」



千夏の頭横にしゃがんで、千夏の髪の毛をかき分けて顔を探した。

真っ赤な顔を見つけるのは簡単で、粒状の汗が散らばっていた。



「水買ってきたよ。飲む?」



千夏は目を閉じたまま、ゆっくりと呼吸を続けた。



「どんだけ走ったの?」



半開きの口が微かに震えた。

息が零れる音は聞こえたが、声として認識することは出来なかった。

脱力感満載の千夏の顔についた小石を払って、持っていたハンカチで汗を拭いた。

千夏は少しばかり口角を上げた。



「ん〜…。千夏ぅ、いくらなんでも無防備すぎない?」



千夏に少しばかりの余裕が残っていることを確認したため、僕は少しおどけた。

少しめくれたTシャツから覗く色白の腹を隠して、スポーツ用の短パンから覗く太腿をサラッと撫でた。

どういう訳か、千夏が体を震わせた。

それが面白くてもう一度撫でると、千夏は背中を丸めて僕の手から逃げようとした。



「千夏。早く帰ろうよ〜」



千夏の背中をわざとらしく撫でて、体を傾かせた。

口に入りかけていた髪の毛を避けると、千夏はうっすらと目を開けて、腕で顔を隠した。



「…もしかして」



千夏の行動が気になって、腕を強引に剥がすと、千夏の顔が濡れていた。

これが汗でないことはひと目でわかる。

外れてほしかったものの、僕の予想は正しかったみたいだ。



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