第33章 紙一重
私は今辛いのだろうか。
何が原因で?
何に対して辛さを抱いてる?
毎日笑って、みんなと楽しく過ごしてる。
悟との時間もそこそこ取れている。
けれど、鏡に映る自分の顔は情けなく微笑んでいた。
何も考えなくても笑うようになっている。
自分が自分で怖い。
「おかえりー!」
「ただいまぁ!ん〜、このケーキ美味しそー!悟、私の分よそって」
「チョコ?チーズ?いちご?モンブラン?最初はチョコだよね。はいどーぞ」
お皿に乗ったチョコケーキと飲み物を同時に渡してきた。
元々チョコを選ぼうと思っていたけれど、どうして分かったのだろうか。
不思議に思いながらケーキを口に放り込むと、じわっと溶けて滑らかなスポンジケーキが舌を滑る。
流石、悟が選んだお菓子だ。
美味しい。
「UNOたいかーーーーい!」
「「「Yeahーーーー!!!!」」」
「…」
今、私は楽しんでいるのだろうか。
「ちょ、悠仁!私のことどんだけ飛ばす気!?」
「じゃあ、僕が回してあげようかな」
「先生!ゲームに情けは不要っしょ!」
ダメだ。
意識すればするほど、ぎこちなくなる。
「はい!伏黒、UNOって言ってなーい!」
「言った」
「うん、言ってたね。言ってないの、野薔薇じゃない?」
「えっ、うっそ!」
その後も自分に対する違和感が消えることはなかった。
周りに変だと思われなかったことが幸いだった。
「あー、腹一杯。先生達、さんきゅーな!」
「次は肉ね。高級なやつ」
「お前、ほんとガメツイな」
3人がいなくなって、私たちはふざけながらも真面目に片付けをした。
私の着ていたアニメキャラのTシャツは、体のサイズより幾分か大きいので、動きやすくて気に入っている。
そして何より、絵が気に入っている。
「じゃあ、僕。ちょっと用事あるから、先帰ってて」
「うん。少し動いてから帰る」
「今日くらい休んだら?」
「これ以上体重増えたら、悟も嫌でしょ?」
「僕はどんな千夏でも好きだよぉん」
大きく被さって、幼いキスをしてきた。
たまにはこういうキスもありかもしれない。
「じゃあね。愛してるよ♡」
「はいはい。前見て歩いてね〜」
ご機嫌な悟を見送って、電気を消してから部屋を出た。