第33章 紙一重
「3人の成長?活躍?を祝して…!」
大きなクラッカーを3人に向ける。
「おめでとーーー!」
「え、おめでとう?」
思わず紐を引いてしまい、大きな破裂音とともに目の前が金一色。
絶対にタイミングを間違えた。
「いぇーーーーい!」
悟は次々とクラッカーを破裂させていき、呆然とする3人はあっという間にキラキラになった。
「何これ。いじめ?」
まず初めに反応したのは野薔薇。
肩に乗った紐をバサッと落とし、ギロリと私を睨んだ。
ほとんど悟の仕業なのに。
何故か私が睨まれる。
「…うおっ!すげー!なにこれ、なにこれ!!」
野薔薇に触発されて、フリーズ状態を解除した悠仁。
腕をパタパタさせて、狭い部屋を見渡していた。
「……」
「新入生歓迎会!?俺、俺のため!?」
恵は何か言うわけでもなく、黙々と自分の体についた”ゴミ”を振り払った。
隣の悠仁との差は酷いものだ。
「悠仁だけじゃないよー。3人の新入生歓迎会だ」
「いぇーーい!」
「えっ、ピザあんじゃん!ピザ!」
「…そのために俺たち呼んだんですか」
「そうだよ。レッツパーリー!」
食べ物に目を輝かせる野薔薇。
悟のノリに唯一乗っかっている悠仁。
真顔で座布団の上に座った恵。
「これって超有名、予約必須洋菓子店の…」
「食べたら二度と普通のケーキは食べられなくなるって言う…」
「ぜーーんぶ、僕の奢りだよ〜」
「「神!!」」
「お前ら、少しは落ち着け」
4人が各々楽しんでいる様子を、遠くから眺めた。
やっぱり私はおかしいのだと思う。
自分は何もしていないけれど、皆が楽しそうにしているのを見ただけで、こんなにも満足している。
「ねー、飲み物ちょうだい」
「フ〇ンタでいい?」
「茶」
「あれ、大人になってる」
「たりめーよ。ケーキ食べんだから」
野薔薇が突き出した紙コップに、緑茶を注ぐ。
「八乙女さーん、俺も茶!」
「俺も」
紙コップ3杯分が無くなったペットボトルを置き、自分の飲み物に口をつけた。
「八乙女さんも食べよーぜ!」
「うん。その前にトイレ」
トイレに向かい、用を足す。
手を洗い、ハンカチで拭く。
鏡に映る自分の顔を見て、何故か涙が出てきた。