第32章 世代交代の道標
「ただいまー」
「おかえり」
「あれ、いたんだ」
「疲れたからサボった」
「うっわ」
手を洗って、貰ったコーヒー牛乳を冷蔵庫に入れた。
ストックがあるのに買ったのかと聞かれたため、貰ったのと返すと、悟はニヤッと笑った。
嬉しそうな顔が出ていたのだろうか。
「野薔薇が随分特別みたいだね」
「うーん。そうだなぁ」
昔のことを思い出す。
「そうだね。特別だ」
「ふ~ん。子供嫌いのくせに」
「子供が嫌いなんじゃないの。私に似た子供が嫌いなだけ」
「野薔薇、千夏にそっくりじゃん」
「違うよ」
初めて野薔薇に話しかけたとき、私は疲れていたのかもしれない。
普段なら、そんなことは絶対しないから。
「…妙に執着してるね」
「そう?」
「話、聞かせてよ」
「機会があったらね」
自分でも思う。
私の人生には波が多すぎる。
悟と出会って、再会して。
硝子と傑と出会って、青春を味わって。
殺されそうになって、逃げて、逃げて。
そして、野薔薇たちに会った。
彼女も波の一つだ。
「まぁいいや。抱き着かせて」
「重いぃ―」
「はぁ~、落ち着く」
正面から体を倒してきて。
マッチョでない私に、悟の体を支える力はない。
重みに耐えられず、ソファーにたどり着くまで押され続けた。
私の膝に頭を乗せる悟。
柔らかい髪の毛を指の間に通しては、撫でる。
「いつもお疲れ様です」
「ん~」
いくら最強の男だとしても、疲れを知らないわけではない。
らしくなく甘えてくる悟を見て、人間らしさを感じた。
「ねー、ヤバいよ」
「何が?」
顔をあげたと思ったら、悟もソファーに乗ってきて、覆いかぶさってきた。
「僕の五条悟が爆発しそう」
そう言って、私の手を自分の股間に移動させた。
「襲っていい?」
これまたYES or YESの質問。
返事を待つことなく、キスしてきた。
例え、応えるのを待ってくれても、私の返事は決まっていたので、今日は大人しく従ってあげることにした。