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【呪術廻戦】infinity

第31章 大人になれない大人(仮)


*****


「何。あんたも来たの?」

「ダメー?」

「…体温測って」

「えっ、何で熱あるって知ってんの?…ぐっ」



脇に体温計を刺され、変な声が出た。

恵が硝子の治療を受けると聞いたので、私もついて行くことにしたのだ。

恵は治療を受けると、さっさと寮に戻ってしまい、ほぼ平熱になった私の遊び相手になってくれなかった。



「ねー、硝子ー」

「黙って」

「遊び行こーよ」

「仕事」

「サボってよ」

「…私と同じアラサーの発言とは思えないわ」



テキパキと手元を動かす硝子の横で、私は永遠と遊びに誘い続けた。

私がこっちに戻ってきてから、硝子と遊びに行ったことは無い。

飲みに行ったことはあるけれど、それも数える程度。

硝子の休みが少ないことと、私に放浪癖があることが原因だ。



「泊まりがけで遊び行ったのとき…」

「あぁ、沖縄?」

「そう!覚えてる?」

「もちろん」

「その時と一緒でさぁ…」

「周り騙して抜け出そうって?」

「そう」

「今はあんなこと出来ない」



硝子はいつからそんなに真面目になってしまったのだろうか。

社会に従順な硝子は、家入硝子ではない。



「あ、そうだ。この間京都に行った時、歌姫先輩と飲んだんだけど…」

「へぇ、いいじゃん」

「…あんたのこと話したら、めっちゃ驚いてたけど?まさか、会いに行ってないと思ってなかった」

「いや、一回行ったんだよ。でも、タイミングが…」

「会えるまで通えよ」

「…ごもっともで」



すると、硝子はデスクの中から、ガラクタのような物を沢山取りだし、その瓦礫の山から黒い鍵を取り出した。

それを顔前で揺らしながら、ニヤッと笑った。



「行っちゃう?」



社畜硝子から、家入硝子へ覚醒。



「マイカーってやつ?」

「まぁね。あんたも免許取りなよ」

「3月に取ったよ。合宿で」

「へぇ。こんな奴に免許を与えるなんて…。恐ろしいな」



白衣を台の上に雑に置き、コーヒーを飲み干した硝子。

そして、小さなバックを手に取って、髪をまとめ始めた。



「行くなら早く」

「はいはい。なんか、こーゆーの懐かしい」

「…もう味わえないと思ってたよ」



硝子の代わりに部屋の電気を消して、私達は大人らしからぬ悪行に走った。

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