第31章 大人になれない大人(仮)
虎杖の話をまとめると、禁煙区域でタバコをふかしているグループがあったため、それを八乙女さんが注意した。
そいつらは見るからにガラが悪く、通る人皆見て見ぬふりをしていた。
注意すると止めてくれたのだが、去り際に八乙女さんに足をかけた。
当然八乙女さんには全く意味の無い嫌がらせだが、イラついた八乙女さんは口調を荒らげて…。
「なんで伏黒達が止めないのか不思議だったわ」
「まぁ、いつもの事だし…」
口喧嘩をし始めた。
お互いがお互いを舐め腐っている、声量が緩やかな口喧嘩。
そしてその中で、相手が『殺す』に似た単語を発してしまい、八乙女さんの逆鱗にふれた。
「だって、八乙女さんの足見た!?めっちゃ物騒なものついてたけど!?」
「いつも通り」
「あれが!?」
八乙女さんは白いワンピースの裾を持ち上げて、足に着けた小さな武器庫を見せつけて、ニッタリと笑った。
「あの笑顔見た時、何度もあの気味悪い笑顔が夢に出てきたから、お前も気をつけろよ」
「てか、五条先生も五条先生じゃね?普通、あの状況で彼女の太もも心配する?」
「あーゆー人なんだって。こっちこそ、マジで気をつけろ」
荷物を返されて真っ先にすることが、あの武器セットを足につけること。
一般人が持っていないような道具を見せつけて脅す恋人を見て真っ先にすることが、その人の太腿を恋人らしい理由で隠すこと。
いつも通り、八乙女さんは八乙女さんでおかしいし、五条先生は五条先生でおかしい。
「俺、やっていけるかな」
「…多分大丈夫だと思う」
なぜなら、きっと虎杖もあっち側の人間だから。
その事は言わないでおいた。
「恵〜」
「…」
「めーぐーみー!」
「おい、伏黒。呼ばれてんぞ」
「…知ってる」
五条先生が八乙女さんに腕をもがれかけている。
どうせいつもの流れで、俺が五条先生の財布を持って何かのお菓子を買うのだろう。
あの二人の金銭感覚のズレを調整するのに、いちいち俺を使わないで欲しい。
今でさえこんなに大変なのに。
もう1人同級生が増えることを知って、俺は発狂しそうになった。