第30章 疲れとストレス
「恵〜。悠仁は?」
「トイレです。場所は伝えたんで、ここに来ますよ」
ふと、点滴というものが不思議に思えた。
小さな針の穴から、袋に入っている液体が、体内に入っていく。
原理とか難しいことは分からないからなのかもしれないが、不思議に思えてならない。
後で外すと言われたが、まだ看護師さんが来ない。
自分で外してもいいものなのだろうか。
「失礼しやーす!」
テープの端をペリペリと剥がしてみる。
「やっと来たね」
「あ、これ五条先生の分ね。さっき伏黒と買ってさ…ん?」
テープを剥がしたり、戻したりしながら遊ばせ、入ってきた男の子を見た。
昨日の男の子であることは間違いないが、どうしてここにいるのか分からない。
自然と首を右に傾けると、相手も私に合わせて首を傾げる。
「…もしかして、昨日上から落ちてきた人?」
「さ、さぁ…?」
認識のされ方が謎に満ちている。
きっと私が失った記憶の中で、私は上から落ちたのだろう。
上から落ちてくるという状況に、どうしたらなるのか全く分からないが、とりあえず飲み込んだ。
「虎杖…この人は」
「あ、伏黒の彼女?」
「は!?おま、マジでやめろ」
「恥ずかしがるなってぇ〜」
「や・め・ろ!」
「…な、何だよ。ノリ悪いなぁ」
単なる冗談に翻弄される恵が気の毒で仕方なかった。
チラリと悟の様子を伺うと、特に何も反応を示してないので、私と恵は一安心。
「でも、昨日一緒にいたよな?放課後も…。なんか記憶にある」
「それは確かだけど、この人は…」
「あ、28歳だよ。私、高校生じゃない」
「えぇ!?マジっすか!?」
2度も会話を妨げられた恵は不機嫌に。
歳に驚かれた私は最高潮に喜び。
部屋の両極端の情緒の差が激しい。
「…この人も呪術師で、昨日は一緒に潜入捜査してた」
「何それ、カッコイイ!俺もやるかな?」
「知らねーよ。まずは入学が先だろ」
「え?自動的に入学出来んじゃないの?」
「…まさか説明してないんですか」
「ん〜?後で言おうと思って」
全く話についていけない。
ニュウガク?
誰が?