第30章 疲れとストレス
「八乙女さーん。体調はどうですか?」
「あぁ、まだ少しだるいですけど…」
「熱測りましょうか」
「はい」
体温計は37,0℃を示した。
昨日は40℃近い熱だったらしく、看護師さんに安堵された。
私は小さい頃から体だけは丈夫だったので、ここまで深刻な風邪をひいたのは記憶上初めてだった。
「あら!伏黒さんがいなくなってる!」
「さっき出ていきましたよ」
「もー。あの子もあの子でケガしてるのに…。男の子って頑丈ですよね」
「はは…」
きっとここは一般病棟だろうから、”呪力のおかげです”なんてことは言わないでおいた。
看護師さんは恵が戻ってきたら教えて、と頼み、病室を出ていった。
しばらくして運ばれてきた朝食を口に入れながら、溜まっていたメッセージに目を通した。
その中に悟のものはなかったが、メッセージの横に既読マークがついていた。
理由は知らないが、悟は宮城にいるみたいだ。
そして、きっと、多分、絶対、ここにきてくれる。
全て片付いたら、必ず来てくれるだろう。
熱のせいか、疲労のせいか。
頭が上手く回らない。
喧嘩とか、指のこととか、任務のこととか。
これ以上考えていても仕方ないので、本能のまま眠りにつくことにした。