第30章 疲れとストレス
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虎杖悠仁。
ソイツから貰った箱には、呪物が入っていなかった。
俺が追ってきたのは、箱にこびりついた呪力の残穢…!!
「中身は!?」
「だァから、先輩が持ってるって!!」
頭の中に八乙女さんの憎らしい笑顔が浮かんだ。
絶対、こっちがハズレくじだと知っていたはずだ……!
「そういえば、今日の夜、学校でアレの御札剥がすって言ってたな」
不幸には不幸が重なる。
最悪だ。
「…え、もしかして…ヤバい?」
「ヤバいなんてもんじゃない。ソイツ、死ぬぞ」
走り出したのと、携帯を取りだしたのはほぼ同時だった。
もちろん、連絡を向けるのは八乙女さんだ。
「八乙女さん!ヤバいことになりました!」
『んー。こっちもまぁまぁヤバいかな』
呑気な声。
本当にやばいのか、冗談なのか、全く判断できない。
「今どこです!?」
『学校〜
「…!じゃあ…」
『指持ってる女の子、いたよ』
助かった…!
八乙女さんがついているなら、安心できる。
そう思ったのは一瞬のこと。
八乙女さんはやはり狂っている。
『一緒に御札剥がすことになった』
「…は!?頭おかしいんすか!?」
『私が恵に着いてきたのは、恵を監督するためでもあるけど、呪物を簡易的に封印するため。だから、一緒に御札剥がそーって』
一般人を避難させるのが先だろ…!
八乙女さんの適当さに、頭が割れそうになる。
こんなことなら、1人で来た方がマシだった。
「その人たち、殺すつもりですか!?」
『…』
おかしい。
八乙女さんが、”八乙女さん”じゃない。
「八乙女さん…!?」
『ま、とにかく”なるはや”で来てね。待ってまーす』
一方的に電話を切られ、会話を止められた。
「やっぱりヤバい?」
「…ああ。とにかく最短で学校に向かうぞ」
何があったのかは全く、何一つ分からない。
でも、想像よりもヤバいことになっていることは確かだ。
虎杖はまだまだ余裕そうなので、少しスピードをあげた。