第30章 疲れとストレス
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「これからどうするんですか」
「えっとね…」
スーツケースからシャツ1枚とスーツの下を取りだした。
いずれも悟のもの。
「これ着て潜入捜査!」
「…あそこって学ランじゃないですか?」
「多分大丈夫っしょ!」
恵の体に合わせると、やはり少々サイズが合わないようだ。
そこはソーイングセットで仮止めすることで解決。
不服そうにしながらも、きちんと着てくれる恵に感謝した。
「そして、私も…」
スーツケースから、中学の時の制服スカートと白シャツを取り出して、恵に見せつけた。
中学はセーラー服だったので、スカートだけなら普通の私服として言い訳できるのではないかと思ったが…。
実際に着てみると、やはり年齢は隠せそうにない。
「流石にアウト?」
「…さぁ」
そこで、メイクの路線を変更。
子供っぽく見えるようにメイクし直すと、納得の出来栄え。
「これでどう?」
「…いいんじゃないっすか」
恵に許しの言葉を貰ったため、この格好で高校へ移動。
ホテルを出る時にボーイに2度見されたが、ヒラヒラと手を振ると慌ててお辞儀してきた。
即興にしては中々変装の出来が良かったらしく、2人揃って仲良く高生に溶け込むことができた。
「なーに、ここ。本当に昼間の学校?」
「…死体でも埋まってんのか?」
恵が独りごつ。
恵も思っているだろうが、この程度の呪霊が普通にうろつくなんてありえない。
宿儺の指だろうか。
「クソ!気配がデカすぎる…」
「うんうん。それなー。まじウケる!」
「…なんの真似ですか」
「今どきの高校生ってこんな感じじゃない?」
「…この状況、楽しんでません?」
「うん、楽しんでる」
制服を着るだけで、あの頃に戻ったみたいでワクワクする。
羞恥心なんて感じていなかった。
「でも、こんな気配デカかったら、潜入した意味がまるでねーっすよ」
「ね?厄介でしょ」
「はい…。特級呪物、厄介すぎます」
宿儺の指の厄介なポイントは、気配がデカすぎてどこにあるか分からないこと。
冥さんと探していた時も、とても苦労した。
片っ端から探していくしかないのだろうけど、もっといい方法がありそうた。