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【呪術廻戦】infinity

第29章 不穏状態



再度鳴るインターホンの音を無視して息を吸う。

そして吐く。

映画を一時停止して玄関に向かい、鍵を開けた。



「ただいまぁ…」

「おかえり」



必要最低限の動きでソファーに戻る。

一瞬で私の機嫌が悪いことに気づき、いつものように過度なスキンシップは取ってこない。

そういうところが本当に好きだけれど、そんなことお構い無しに私はイラついている。



「映画見てたんだ。今日、帰り早かったの?」

「…そう」



ダメだ。

悟に当たってしまう。

頭の毛根が熱帯びて、チリチリと痒みを感じる。



「…ふぅん。あっ、ご飯余ってる?」

「は?いらないって言ったじゃん」

「あ、うん。そうなんだけど、もし余ってたら食べたいなーって」



心の中で何度も謝る。

こんな話し方をしたいわけではない。

余裕が無いのだ、と。



「おっ。あるじゃーん。これ、食べていい?」



悟がフライパンを覗き込んで聞く。



「ダメ。やめて」

「えっ?あ〜、大丈夫。全部自分でやるから」

「やめてってば」



悟の腕を引っ張る。

自分でも何がしたいのか分からない。



「どうして?美味しそうなのに」



顔を覗き込まれて、思わず泣きそうになる。

その場で足踏み、何も言わずソファーに戻る。



「ふぅ…」



悟は小さく息を吐いた。

それが私の耳に不自然なほど残る。

こんな面倒な女に対する愚痴が、ため息ひとつで済むならこれ以上のことは無い。

けれど、どうしても気になってしまう。

映画を再生しながらも、貧乏ゆすりは止まらない。



「隣、座っていい?」

「…」



物語の盛り上がりポイントで、とてつもなく怖い場面だと言うのに、恐怖よりも怒りが勝っている。

そんな何も答えない私の隣に、悟が腰掛けた。
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