第27章 新たな時代の幕開け
楽しい食事会を終え、帰宅して最小に出た言葉は”風呂!”だった。
焼肉屋に移動する前に体を拭いたが、シャワーの気持ち良さには劣る。
交代するように入浴した悟を待っている間に洗濯物を取り込み、収納した。
まるで監視カメラがあるように、最後の洋服をしまい終えたと同時に悟が戻ってきた。
流石の私でも少し恐怖を感じた。
「晩酌?」
「悟も飲む?」
「嫌」
「少しだけっ」
「…一滴だけね」
「つまんなーい」
下戸だからアルコールが嫌いなのか、アルコールが嫌いだから下戸なのか。
その真意は、頑なにお酒を飲んでくれないから分からない。
「千夏って、明日暇?」
「暇だよ。えっ。何。怖い」
「全然怖くないよ~…。ただ、ちょっと、ね」
その言い方が怖い。
一体、何を言われるのだろうか。
「実はさ、ずっと千夏に隠してたんだけど」
「…何?」
「この部屋、急遽借りたんだよね。千夏が帰ってくるって分かってから、急げ―って感じで」
「あ、そう。へぇ…」
こんなものが秘密に入るものなのかは置いといて、これであの日の違和感は解消された。
初めてこの家に来た時、あまりに部屋が整いすぎていて、驚いたのを覚えている。
家具の使用感がなかったし、生活用品が整っていなかった、
「それで、何ですか。引っ越すの?」
「千夏が引っ越したいなら、それはそれでいいけど、そうじゃなくて…」
悟はイチゴミルクを飲み干してから、手を合わせてニコッと笑った。
「明日、一緒に本家にいかない?」
「…ぬぁ!?」
忘れていたが、悟は五条家の主だ。
私がいなかった間は本家の屋敷で暮らしていて、今も定期的に帰っていたらしい。
それには特に問題はないが、私が行く理由が分からない。
結婚の挨拶を意識したが、私なんかがそんな用件で伺うわけにはいかない。
「何のために…!?」
「千夏、ちゃんと呪術師登録したでしょ?」
「だから?」
「一緒に帰ろうよ」
「いやいや、文脈…!?」
ちゃんと話さないとお酒を突っ込む、と脅すと、へらへらしながらも、私の腕をつかんで離さない。
お酒だけは何が何でも嫌なようだ。