第27章 新たな時代の幕開け
「どこにいるのかと思ったら…」
「やっほー」
「そこいるのは、恵じゃないか~。何してんの?」
「この子、今酸欠だから話しかけないであげて。ストレスの源さん」
4試合、4勝。
その相手はくたくたになって、床に寝転がっている。
最初の2試合は速攻終わらせ、後の2試合は足をたくさん使ってもらった。
正直に言うと、全く余裕はなかったが、恵の目には余裕に満ちているように見えただろう。
何度も言う通り、私は負けず嫌いの見栄っ張りなのだ。
「手加減してあげた?」
「年頃の男の子相手に、そんな暇ないよ」
多分、もう一度やったら負ける。
多分というか、間違いなく。
呪力を使ったら、話は全く別だが。
「恵。大丈夫?」
「…どんな生活送ったら、そんなトリッキーな動き、できるんすか」
「危ないと思ったら、体が自然に動くんだよ」
「…それって、誉めてくれてます?」
「一応ね」
惠はかすかに笑って、膝に手をつきながら立ち上がった。
「恵。僕の彼女を独り占めした対価は得られた?」
「はい」
「それは良かった」
悟の目が優しい。
見えてないけど、なんとなくそう思った。
「それじゃあ、ご飯食べに行こ!惠、何食べたい?」
「僕、千夏の手料理、楽しみにしてたんだけど」
「疲れたから今日はなーし」
「…恵、今度覚えといて」
「昨日は中華だったから、それ以外ね」
「…焼き肉で。五条さん持ちのやつ」
「それいいね!」「おーい。僕の脅し聞いてた?」
それぞれの声が交差し、何ともやかましい。
昔とは違う、新しいやかましさに、時の流れを感じずにはいられなかった。