第27章 新たな時代の幕開け
「その、さ?一回、千夏のことを紹介しとこうかなって思って」
「恋人です、って?」
「それに、一度はっきり言わないとね。何を言われようと、この人としか結婚しませんって。家の人間…まぁ、その中の温和な方だけでも、先に納得させようかな…と」
嬉しすぎる言葉に、腕から力が抜けていく。
顔が火照るのを自覚した。
「どう?」
向かいにいる悟に抱き着くために回り込む。
「好き…!」
プロポーズに近い言葉は、いとも簡単に私を腑抜けさせた。
この人を好きになってよかったと、ベタなセリフが自然と頭に昇ってきた。
「でも、前日に言う話じゃなくない?」
「時間なかったから」
「それでも…!」
「はいはい。ごめんね」
「いいよ、許す!」
多分、今なら何を言われても了承してしまう。
冥々さんみたいな性格の悪い人とは、とても話したくないと思う。
「でも、あの屋敷に行くのは久しぶりだなぁ」
「ほとんど変わってないよ。初枝さんもいるし」
「…それはやーだーーーー。変わっててよーーー」
初枝さんというのは、五条家の仲働きTOP。
通称、おばばだ。
当時の年齢、63歳とは思えないほど元気で、悟と会うのを阻んできた張本人。
怒られた回数、数知れず。
私にとって、恋敵と言えばおばばだった。
おばばに負けないように、試行錯誤を繰り返していた日々が懐かしい。
鍋だったり、桶だったり、色々なものが空を横切る光景は、今でも目に焼き付いている。
「とりあえず、明日は初枝さんを攻略すれば、ゲームクリア」
「…ここで会ったが運の尽き。おばば、陣上に勝負だ~」
「はは、大口叩いちゃって」
「だって、目の前でこんなこと言えないもん」
明日はこんなことを言えるはずがないから、今のうちに強気の言葉を吐き出しておく。
せめてもの景気づけだ。