第4章 祓う者と殺す者
「喋れるなんて偉いじゃん。練習したの?」
引き寄せられるように、1歩1歩近づく。
藁にもすがる思いだった。
今度こそ、あの時みたいに、お話出来るかもしれないと。
「ほんと、バカ!!」
横から歌姫がとび出てきて。
呪霊を祓ってしまった。
跡形もなく、いなくなってしまった。
似たような呪霊はまだいるけれど、あの子はもういない。
「何してんの!?しっかりして!」
「…」
「ッチ!」
ただ呆然と歌姫が戦う姿を眺めていた。
歌姫はとても可憐に動き、リズミカルに呪霊を祓っていた。
思わず拍手をしそうになるくらい。
「千夏!!!あんたも手伝ってよ!!」
「……うん」
考えるな。
さっきのことは忘れろ。
考えるから心が痛むんだ。
何も考えるな、千夏。
「歌姫、耳」
「はは、りょーかい」
顔にかすり傷なんてつけちゃって。
女の武器を無駄にするなんて。
歌姫はなんて馬鹿なんだろう。
そして、歌姫を傷つけてまで呪霊にあらぬ期待をかけている私は、なんて大馬鹿者なんだろう。
「死ね」
ごめんなさい。
こんなことしたくないのに。
誰も殺したくないのに。
誰にも死んで欲しくないのに。